稲本昌之

気になったのは、ラリー中にコーチから『コントロールを意識して!』と声をかけられた時のリアクションの違いです。ペースを落としてコントロールし始めた日本人に対して、ヨーロッパの選手達は、ほぼペースを落とさずにコントロールにチャレンジし始めます。一言でペースを落とすことができる日本人の技術の高さを褒める場所である、と感じると同時に何かモヤモヤしたものを感じます。日本人に欠けているのは、戦っているイメージです。ボールのペースを落とすと言うことは、弱く軽いボールを打つことになります。そうすると相手にコースを変えられたり、強く打たれて深く押し込まれたり、どちらにしても不利になります。 日本人のペースを落とす能力を褒めるべきと書きましたが、試合中になると、ペースを落とす能力はヨーロッパの選手の方が上です。相手を左右に走らせたり、角度をつけて追い出したり、深く打って下げたり、ドロップショットしたり。試合を見ていると、何かやるしやろうとします。ボールを散らしてコントロールして来ます。ラリー練習の時のコーチの『コントロール意識して!』と言うアドバイスには素早く反応して優等生だった日本人は、ボールをコートに入れていますが、コースを変える勇気すらなかなか出せません。オープンコートができても同じ方向に打ってしまいます。 一番ショックを受けるのは、展開力に対するアドバイスをコーチ達はほとんどしていないことです。しなくてもできるからです。